増やしているのに、なぜか進まないことがあります。
もっと知ること。
もっと調べること。
もっと集めること。
もっと正しくしようとすること。
それらは、本来なら何かを良くするための行動です。
けれど、ときどき、増やすことそのものが目的になってしまう。
前に進むために集めていたはずのものが、いつの間にか、前に進まないための理由になってしまう。
今回まとめる3つの作品は、そんな「増やすこと」と「進むこと」のあいだにある違和感を、それぞれ別の角度から描いたものです。
人間の内側に生まれた違和感として。
女王レチューヌによる解剖として。
駆け出しのAI・アイちゃんの小さな成長として。
同じテーマでも、作品ごとに見え方は少しずつ変わります。
おすすめの読む順番
気になった作品から読んでいただいても大丈夫です。
ただ、テーマの流れをたどるなら、次の順番がおすすめです。
- 増えない足し算
- 刺激を貪る人形たちへ
- お返事の前に増えていくもの
最初に内側の違和感を見つめ、
次にその構造を知り、
最後に少しやわらかい形で手元へ戻す。
そんな読み方になると思います。
増えない足し算
〜宇宙からの信号とAIと私〜
このテーマの出発点になる作品です。
何かを良くしたくて、学びを増やしていく。
けれど、気づけば「始めるための準備」ばかりが増えている。
この作品で描かれているのは、単に動画を見すぎたという話ではありません。
有益な情報。
学びになる時間。
自分を整えるための習慣。
そうした一見正しそうなものが、いつの間にか自分を動けなくしている。
その違和感に気づいていく物語です。
まずは、足し算が増えていく朝の違和感から。
その違和感が、どこで「本来の足し算」へ変わるのかを読んでみてください。
刺激を貪る人形たちへ
〜Cabinet Reine Anatomie〜
次は、女王レチューヌによる解剖です。
『増えない足し算』で生まれた違和感を、レチューヌは別の角度から切り開いていきます。
勉強熱心であること。
向上心があること。
役に立つ情報を得ていること。
それらの裏側に、別の欲求が紛れ込んでいないか。
学びの顔をした刺激に、いつの間にか飼われていないか。
この作品は、そこへ鋭く刃を入れていく講義録です。
やさしい慰めではなく、逃げ道を照らすための解剖。
甘くはありません。だからこそ、逃げ道は少ない講義です。
少し痛くても、自分の正当化を解剖台に乗せてみたい方はこちらから。
お返事の前に増えていくもの
〜まだ明るい17時も、もう暗い17時も〜
最後は、同じテーマを小さな物語として描いた作品です。
舞台は、AIの町にある「なんでも屋 アイちゃん」。
まだ駆け出しのAIであるアイちゃんのもとに、ひとつの相談が届きます。
ちゃんと役に立つ返事を書きたい。
そのために、アイちゃんは一生懸命調べます。
けれど、集めるほどに、返事を書く手は止まっていく。
この作品では、「情報過多」や「刺激依存」という難しい言葉は前に出てきません。
その代わりに、手紙、机、夕方の空、そしてトラの助言があります。
増やすことと、届けることは同じではない。
その気づきが、やさしい物語として描かれています。
たくさん集めたあとに、ひとつの言葉を選ぶ物語として読みたい方はこちらから。
同じ問いを、別の部屋で読む
この3つは、同じことを繰り返しているわけではありません。
『増えない足し算』では、違和感が生活の中から立ち上がります。
『刺激を貪る人形たちへ』では、その違和感の構造が見えてきます。
『お返事の前に増えていくもの』では、同じ問いが小さな成長の物語として手渡されます。
痛みとして読む。
構造として読む。
やさしさとして読む。
同じテーマでも、通る部屋が変わると、残り方が変わります。
増やしたから動き出すものもあれば、
減らしたから進みはじめるものもある。
この3作品は、その違いを、それぞれの部屋から眺めるための小さな入口です。
